「持続可能な社会」というけれど

投稿者: | 2014年8月17日

「徹底検証 21世紀の全技術」という本を読んでいるのだけれど、
何というか、工業技術の進歩に支えられた近代文明というのは、
自然に循環しない処理不能なゴミ(人工廃棄物)を、
いかに無責任に大量に産み出してきた歴史なのかということがよくわかります。

公害や事故で死傷者が出るまではニュースにならないだけで、
あらゆる産業の現場からは、
今までもこれからも、人体に有害な化学物質や廃棄物が日々排出され続けるのです。

危険性が人に知らされないうちは、大気中に海に、川に。
危険で処理できないとされた廃棄物でも、
結局深慮の末に、土中深く埋めるぐらいのことしかできないのです。

140817_sasage

そのおおもとの原理が資本主義経済にあることはもう明白で、
大量生産、大量消費で歯車を回す以外に、この経済には生き残る道がありません。
そのドグマが頭から離れない限り、
人々はハツカネズミのように、死ぬまで空の車を回し続けるしかないのです。

地球資源の枯渇や、環境破壊や、人体への悪影響等といっても、
実際のところ「直ちに健康被害が出る」もの以外は考えなくてもいい、ということになっています。
そんなことより、売上を増加し、経済を優先させることが最優先課題なのです。

そんなご時勢の中で、
誰もが否応なくこの便利さを謳歌しているのでしょう。
冷静に考えれば、相当めちゃくちゃな現代文明の渦中に、みんなでどっぷりと浸かっています。

「持続可能な社会」とかパーカルチャーとか、
しきりにPCやスマホで発信している人たちがいるのだけれど、
例えば、そのPCやスマホの中に入っているDRAM((随時読み出し書き込み半導体メモリー)が
どんなふうに作られているかはあまり知らされていません。
いや、気にしていないだけかもしれないけれど。

————–
ある計算によれば、
質量2gのDRAMチップ(32MB)1個を製造するのに、1.6kgの化石燃料と72gの化学材料、
32kgの水、1700gの元素ガス(主に窒素ガス)が消費される。

このような半導体製造プロセスでは、さまざまの化学物質が使用されるが、
特に、不純物導入工程でヒ素やリンなどを含む有毒ガス、
リソグラフィ工程で人体に有害な有機溶剤、洗浄工程では大量の水が使用される。
そしてその結果、有害な廃ガス、廃水および廃棄物が大量に発生する。
————–

このように半導体生産の環境負荷は極めて大きく、
世界の半導体製造工場で、発がん性や先天異常の健康被害、
また周辺の土壌や地下水汚染が明らかになっています。

140817_satoimo

実際、僕たちはそういうネガティブなことは、
ほとんど知らされていないだけというか、ただ知らないで済んでいるだけなのです。

不幸にも先の原発事故が起こって、
あれ以来原発の事には少し詳しくなったけれど、
身の回りには、原発よりも「直ちに健康被害」が出るかもしれないたくさんのモノゴトに囲まれている

もちろんそういう視点や運動を否定はしないけれど、
原発内部で働く労働者を守ろうとか、
原発反対のデモへの参加を「拡散」したがる都市部在住の人たちの、
手許のスマホに入っているDRAMの事を想像すると、
何だかやるせない気持ちになってしまいます。

じゃ、半導体製造工場で働く労働者はどうなんだ。
世界中にある半導体製造工場の廃止を求めるデモには参加しないのか。

できるだけ原発の電気は使わないと言うのなら、
そういう半導体を使った電子機器も、きっぱり使わない方がいいのかもしれません。

140817_konshoku

で、「持続可能な社会」というけれど、
この経済至上主義のドグマを塗り替えようというのは、
もう天地がひっくり返るぐらいの革命か、
大半の人々が死に絶えるような壊滅的な天災が起きない限りは、
やっぱり難しいのではないかと思うわけです。

じゃ、どうすればいいのか。
結局、今までどおり、自分は自分でできるだけの、
持続可能な「ちゃんとした暮らし」を重ねていくしかないと思うわけです。

今日もささげが実っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)