ウラ庭に切って放置されていたアロエから、真っ赤な花が頭をもたげています。
引越し荷物もほとんど運び終えて、
あと二晩過ごしたら、10年暮らしたこの町を出ていきます。
野良猫たちは高みの見物。
近所に引っ越しの挨拶に回ったら、ちょっと見ない間にみなさん驚くほど年老いておられました。
もともと過疎高齢化の町には違いないのですが、
特にそういう年齢層が多いのでしょう。
ここ1、2年の老け込みがやけに目立って、何だか切なくなりました。
そうでなくても、今年はお葬式の多い年でした
住民が全員お手伝いに出向くのがしきたりのお葬式、
亡くなられたのもお年寄り、そしてそれを見送るのもお年寄り。
限界集落となる日も遠くはない町で、
地元の有力者やそれに従う住民たちが最後に決めた事が、ゴミ処分場の誘致でした。
もとより次代を担う子や孫は都会に出て戻らず、サルやイノシシばかりが増えます。
ここに車を停めるのもあと二日限り。
時化の日には吹き荒れる潮風が車を洗って、ドアの取手まで塩辛かった。
海の側に車なんか止めるもんじゃない。
でも、来た頃はよくここで釣りをしました。
大きなスズキを釣り上げたり、ワタリガニを引っ掛けたり、
夏にはサビキで小アジをたくさん獲って、おいしくいただいたものです。
韓島が目の前に見える灯台の先まで歩いて行って、
空を見上げて寝転がったりしたなぁ。
こんなに近くにある海なのに、それもいつからか見なくなった。
サザエやアワビがほとんど採れなくなった海。
それでも海は満ち干きをやめない。
汚されても、汚されても、汚されても、汚されても。
ストーブにくべる薪も、残りはあと僅か。
これを燃やしたら終わりにしましょう。
素敵な人にも出会えたし、楽しい思い出もたくさんあります。
でもこのステージは、ここらで幕。
ありがとう。
縁があったら、また会いましょう。